Tグループとは No.085(完) ここまでお読みいただきましたことに感謝します!!

コロナ禍にあって、なかなかリアルな研修や教育など学びの場を創ることが難しい中で、2020年の7月頃フッと思いつき、書き始めました。その時には、学びの場づくりのファシリテーターとりわけTグループのトレーナーとしての自分の体験談や学んできたことを言葉に残しておいてもいいかなと思いスタートしました。なんとか第85話まで書き進めてくることができました。拙文にもかかわらず、またささやかな体験談にもかかわらず、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 Tグループに関わり始めた頃のTグループとは、「一体感をもったグループ」をめざし、その中で「個人の問題」を見つけ、個人の問題を改善する、いわゆる問題解決型のアプローチであると、あくまでつんつんの一方的な見方だったと思いますが、感じていました。

 それを実現するためには、フィードバックという名のもとで、するどくグループや個人の問題点を指摘する形でに相手に切り込み、グループや個人の抵抗などに動じずに対決する強面のトレーナーの姿に、ある種の羨望とある種の抵抗を感じながら、グループの中に居ることを余儀なく居るといった体験より、つんつんのTグループやトレーナーの探求は始まりました。

 今思うと、「一体感をもったグループ」を創る、言葉を換えると「一体感をもったグループに変える」、そして問題があると周りから指摘されて、グループや組織の中で良しとされるメンバーに個人が変化・成長すること、言葉を換えると「個人を変える」ことに対する抵抗だったのだろうとあらためて、ここまで辿り着いて考えています。変える方向に向かせる基準は誰が発しているのか?一人ひとりの内的な欲求ではなく他者からの圧力への抵抗でもあったのだろうと考えています。

 今一度、「会話がリアリティを創る」といった今日の社会構成主義の考え方、そして、「一人ひとりにはポジティヴ・コア(イキイキ生きる源)をもっている」「目指す未来像を描くことで行動が促進される」といったAIアプローチの考え方、「人が問題ではなく、問題が問題なのだ」「人生を生き抜いていくことのできる資質、資源、能力が必ずや存在している」といったナラティヴ・セラピーの考え方に出会ってくる中で、Tグループの中で起こる事柄の捉え方やグループのメンバー相互(トレーナーも含めて)関わり方と学びを、Tグループ誕生から75年経過した今、もう一度検討していく必要性を強く感じています。

 ただ、すでに、つんつんはじめJIEL(一般社団法人日本体験学習研究所)では、その探求は始まっています。Tグループ・セッションの中でのグループやメンバーへの働きかけを行うトレーナーは、AIアプローチやナラティヴ・アプローチを根底にもち、その中から生まれる意図した視点からの介入を試みることも実践し始めています。

 さらに、プログラム全体の構成を大きく変更したTグループのプログラム、例えば、リフレクティングチーム(リフレクティンググループと呼んでいますが)と共に学ぶTグループの実践を2019年より始めたり、Tグループファシリテータートレーニング(アドバンスと呼んでいます)では、リフレクティングチームの活用やドナルド・マクミナミンさんの「2つの島とボート」の考え方を活用させていただき、トレーナー体験に対して相互インタビューをしたり、リフレクティングを組み入れたプログラムを2020年より始めています。まだまだ探求途上ですが、少しでも研究員と共に、言葉にしていきたいと考えています。

 AIアプローチやナラティヴ・アプローチ、とりわけリフレクティングの活用は、かなりの可能性をもっていると考えています。そのためにも、さらなる研鑽が必要であると強く感じています。

 本シリーズを一応一区切りを置くに際し、つんつんの中では、「グループや組織を変える!!」「人を変える!!」を標榜しないTグループや組織開発の実現に向けて、「グループや組織を変えない!!」「人を変えない!!」を大切にする教育者、トレーナー、コンサルタント、カウンセラーを育てたいと思っています。

 では、何を変えるのか?何に変化を求めるのか?

 Tグループ誕生から大きな流れの中で、今の時代「会話を変える!!」ことを通して人と人との関係づくりが行われることが大事なのだろうと考えています。

 それは、「相手の会話を変える」ではなく、「私の会話を変える」ということではないかと考えています。ラボラトリー教育(体験学習)の原点に戻ると、私が「Change Agent」になり、社会の「一隅を照らす」存在になることであり、それはまずは「私の会話を変える」ことから始まるのだろうと思っています。なんて脳天気でお気楽なことを言っているのかと思われるかも知れませんが、やはりそのような人材が育っていくことが必要なのではないかと考えています。

 その結果、私の「会話が変わり」、目指すは、関係性の中で相互の「会話が新しく生まれる!!」⇒「かかわりが新しく生まれる!!」⇒「チームや組織、コミュニティが新しく生まれる!!」といった連鎖が起こることを願い、そのための働きかけの探求が始まっていくのではないでしょうか。また、一方向性ではなく、相互の影響を与え合い、一人ひとりが尊重された生き方やその生き方を支え合うチームや組織、コミュニティが同時に生成されていくのかも知れません。

 このような考え方や思いを同じにしてくださる方がいれば、「会話が変わる!!」関係づくりの探求を、ぜひ共に深めていきましょう💕(一旦・完)

※僭越ですが、最後の写真は、拙著「改訂新版プロセスエデュケーション」(金子書房)をアップさせていただきます。まだまだ途上の出版物ですが、みなさまの教育活動にお役に立つならば、幸いです。