ともすればわかりにくいラボラトリー方式の体験学習の世界で使われている用語を、できる限り容易な言葉で説明することを試みています。 (JIELサイトより移転)

ア行

アイスブレイキング

直訳すると、氷を壊す/溶かすとでも言ったらいいでしょうか。研修に参加者が、集まってきた時、特にプログラムのオープニングの時には、多くの参加者は緊張をして堅い雰囲気の場の中にいます。その時に、少しその緊張をほぐし、心も身体も自由になるようなちょっとしたゲーム感覚の実習を行います。これを、アイスブレーキングとよんでいるのです。研修参加の最初に緊張を感じている、その感覚自身は実はとても大切な体験学習の体験になり、ファシリテーターの関わりによっては、学びにつなげることができる学習の素材であり、プロセスになります。ですから、むやみに緊張をほぐせばよいと言うわけではありません。できれば、ファシリテーターにはそうした緊張感も大切に扱えるだけのスキルが望まれるでしょう。しかし、あまりにも緊張して、コチコチの状態では体験学習の体験に没頭することさえ難しくなることが考えられます。やはり、自由に動くことにより、体験が豊かになり、さまざまなことに気づくことができ、また気づきも自由に参加者と分かち合うことができ、学びも深まることは間違いないでしょう。

アクションリサーチ

クルト・レビンは、研究成果を日常生活や企業などの現場に活用してこそ、はじめて研究であるという強い信念をもっていた。そこで、アクションリサーチという研究方法を提唱し、現場の問題解決に即した研究法の実践を行っている。

アサーション

アサーション(assertion)とは、主張することであり、自己主張をすることととられるかもしれないが、自己主張を指している用語ではない。自分と相手の両方に敬意を払い、双方のコミュニケーションに起こることを大切にしながら、すなわち相手の立場や権利を尊重しながら、自分の欲求や感情、考えや権利などを率直に表現することをアサーションとよんでいる。

一般化

体験し、気づいたことから、自分について、相手について、また人間関係についてなど、一般的にどのようなことが言えるのか、いわば、体験から学んだことは何かを考える作業を一般化と呼んでいる。この一般化の作業を通して、体験した状況と異なる新しい状況に学びを持ち込むための課題が導き出されることになる。

いまここ

これは、体験学習、特に、人間関係トレーニングにおいて、大切にする視点である。体験学習を用いたトレーニングの場では、これまでの日常の経験や役割を問題にすると言うよりは、研修もしくは教育という新しい場面でのそこ“今ここ”で起こっていることを素材にして、自分のありようやグループのありようを考えようとする。それは、共に学ぶ者同士が、過去のことへのこだわりを捨て、まさに“今ここ”でのありようを探ることから、正直に自分に向き合えるし、新しい可能性へと開かれていくのである。いわば、“今ここ”で起こったことは真実であり、そのことから逃げることなくその真実に直面することで学びが深まっていくのである。

インベントリー

インベントリーとは、目録と訳されることがある。何があるかの記録とも言える。それは、心理学などの研究領域においては、自分自身を知るためのテストなどの質問紙などを指している。いわば、体験学習では、ふりかえり用紙や自分自身やグループの状況を知るためのチェックリストのことを指している。

NTL Institute(エヌ・ティ・エル)

1946年夏の米国コネティカット州で開かれたワークショップ後、1947年にメイン州ベセルにて全米教育協会(National Education Association)や大学のいくつかの研究機関の協力のもと[集団発達に関するナショナル・トレーニング・ラボラトリー(National Training Laboratories in Group Development:NTLGD)」を開催したのがNTLのはじまりです。1963年まで全米教育協会の成人教育部門の教育機能を果たしていましたが、1967年にNTL Institute for Applied Behavioral Scienceと名称を変更し非営利組織として運営されてきています。
 ラボラトリー方式の体験学習のコアプログラムとして、65年にわたりTグループを実施してきています。そのほかに、リーダーシップ開発やジェンダーやダイバーシティにかかわるワークショップ、組織開発に関わる多数のプログラムを開催しているラボラトリー教育の歴史ある機関です。(文責:津村 俊充)

エンカウンターグループ

非指示的カウンセリングの創始者であるカール・ロジャースが、カウンセラー養成から始まったグループアプローチを「ベーシック・エンカウンター・グループ(Basic encounter group)」と称し、グループを用いた人間関係トレーニングがアメリカ西海岸を中心にして発展していった。そのグループ体験は、一人ひとりの人間の存在を尊重し、“今ここ”の関係に生きる時、メンバー相互に驚くほどのエネルギーの集中が起こり、その時個人やグループの変化成長が起こることを彼自身発見していったのである。エンカウンター・グループと一般に呼ばれることもある。

オープニング

開会とか開会式と訳せばいいでしょうか。一連のプログラムが始まる際の、最初のプログラムにあたります。一般に、開催責任者から歓迎の挨拶をしたり、施設等の利用の仕方を案内した後、研修や教育の目的を主催者から示したりします。ただし、体験学習を用いたプログラムでは、学習者(参加者)自身がどのような期待やねらいを持ってきているのか、そして集まっているメンバー同士がそれらを明確にしたり、共有化したりする時間が必要です。そして、結果として、主催者の研修や教育目的と参加者一人ひとりのねらいとの擦り合わせが行われ、心理的契約が結ばれることを大切にする時間です。また、この時間は、研修や教育に向かうためのモチベーション(動機づけ)に大きく影響する時間にもなります。

カ行

カール・ロジャース

精神分析学のフロイドに代表される、カウンセラーがクライエント(相談者)の問題の原因を分析したり、解釈を試み治療の手立てを加えるアプローチに対して、カウンセラーがとにかくクライエントの話を十分に聴いていくことによって、クライエント自身が自分の生きる方向を見つけだしていくことができるのだという、クライエント中心療法とか、非指示療法とか呼ばれるカウンセリングの新しいアプローチを提唱した人物である。教育の世界においても、学習者自身の自己実現への力を信じて、関わることの大切さを説いている。

解釈

体験をした後で、気づいたこと、相手が言ったことの意味を考えることを指している。しかし、私たちが物事を見て認識する行為すべてが、なんらかの解釈に基づいているという考え方がある。

介入

集団や組織が、問題を発見し解決していく目的的なプロセスに、何らかの意図をもって働きかけていくことである。グループを用いたトレーニングでは、トレーナーとかファシリテーターがその役割を主に取り、また組織開発の領域では、内部のメンバーが意識的行動したり、外部コンサルタントがその働きをとることになる。介入には、さまざまなアプローチがあるが、体験学習の視点からみると、人および組織が自ら気づき問題解決に向けて動き出すような働きかけが大切になる。

かくされた議題(hidden agendaヒドンアジェンダ)

私たちが何か話し合っているときに、話題として話していることと、その話題の下に隠されている話題(議題)がある。たとえば、「今回は、なかなかスムーズにことが運ばないね。」といった場合に、実は、彼は「私に相談しておけば良かったのに」ということを言いたかったとすると、その実はが、隠された議題である。まさに、仕事をしながらそこに隠されているプロセスに目を向けることで、人間関係も仕事も充実したものになると考えている。

学習共同体

学習する場にいるメンバーすべてを指す言葉であり、教員も学生も共に学ぶメンバーとして存在するという意識をもつことである。そこに学ぶ者同士が信頼関係をもつことができるなら、学習者から自由な発想で意見が出されたり、行動が生まれたりして、学びが広がり深まっていくことになる。

学習サイクル

体験から学ぶために、基本的なステップを考えている。それは、<体験>→<指摘>→<分析>→<仮説化>というサイクルと、<仮説化>したことを、さらに次の<体験>へと試みていくことで、新しいサイクルを踏んでいく学びを指し、体験学習の循環過程と呼んでいる。日常的な表現として、<やる>→<見る/気づく>→<考える>→<これから課題作り>と考えてみると分かりやすいかも知れない。
参考◆円環のプロセス とか、◆循環過程などとも呼ばれる。

仮説化

体験学習のステップの4番目のステップにこの仮説化がある。仮説化とは、自分が学んだことを新しい場面で活用するとしたら、どのようにすれば学んだことが有効に活用することができるかを考える“仮説を立てる”作業を『仮説化』と呼んでる。いわば、何か一度やってみて、今度するとしたら何をするか?とか、考え直してみると何をすればいいか?など、問題解決に向けての新しい計画を練ることを指している。

規範

グループ活動が比較的長く持続すると、そのグループ独自の暗黙の内のルールが出来上がることがある。ホーソン実験に見られるように、『このぐらいの仕事量をこなしておけばよい』というのも一つの規範であり、それよりも多く仕事をしようとしても、またはさぼろうとしても周りのメンバーから圧力が働くことになる。こうした現象を規範と呼ばれたり、グループ・ノームと呼ばれることもある。その他に、社会的に明文化されている憲法のような社会的規範もある。

クライエント

カウンセリングにおいては、患者、相談者のことを指している。

グルーピング

体験学習で、実習をしたりする時の、適切なサイズのグループに分けること。一般的には、できる限り異質なメンバーが集まるように配慮するといいだろう。たとえば、年齢、性別、職種など。また、グルーピングをする時に、参加者にとって、どのような意図(基準)でグルーピングがされたかが明瞭であることは、実習などに参加する際に不用意に詮索せず、安心して参加できることになる。

グループアプローチ

カールロジャースが、Tグループなどの「集中的グループ体験は、おそらく、今世紀のもっともすばらしい社会的発明である」と述べている。グループには、個々人の問題や課題を見つけだしたり、互いに癒したり、学びあったりすることができる力をもっているのである。そのグループの力を活用して、学んだり、治療したりするグループ体験の総称としてグループアプローチという言葉で表現されている。

グループダイナミックス

個としての人間を研究するだけでは、人間関係の諸問題、また組織等の問題を解明することはできない。1924年から1932年にかけて行われたホーソン実験では、照明等の改善などの物理的な環境改善が作業能率をあげるとされていた研究結果を覆し、職場での人間関係、特にホーソン実験では、小グループの中にある規範(暗黙のルール)が作業能率大きく影響していた結果を報告することになった。グループの中に特有に生まれる現象に関する研究領域をグループダイナミックスと呼ばれ、盛んに研究されるようになった。

クルト・レビン

1890年ユダヤ人の雑貨商の長男としてドイツに生まれる。ドイツの大学で、科学哲学、そして心理学を学ぶ。ウェルトハイマー、ケーラーやコフカらによるゲシュタルト心理学の影響を大きく受ける。1935年には米国アイオワ大学で児童心理学の研究も行う。1940年にアメリカの市民権を得て、1943年から、マサチューセッツ工科大学でグループダイナミックス研究センターの創設に尽力し、グループダイナミックス研究の創始者と言われる。1945年には、アメリカ・ユダヤ人会の計画による「地域社会相互関係委員会」の設立に参加し、ユダヤ人や黒人などの少数集団に対する偏見の問題に挑戦し、民主的風土をいかに創ることができるかといった実践的研究を行う。机上の研究だけに終わらさず、絶えず現場の問題を改善することをベースにしたアクションリサーチ法の提唱も行っている。人間関係トレーニングの原点のTグループの開発を同僚と共に行い、今日の体験学習の基礎を作り上げた人物であるといえる。レヴィンは「よい理論ほど実用的なものはない」という言葉を残している。
《参考文献「誠信 心理学辞典」誠信書房 レヴィン(Pp.583-585.)1981》
※もっと詳しくレヴィンのことをお知りになりたい方は、『クルトレヴィン-その生涯と業績-(誠信書房)』をお読み下さい。【2002.08.02 記】

グロウスタイム

「わかちあい」ともいう。実習などなんらかの体験をした後で、ふりかえり用紙に気づきを記入した後で、その記入したことをグループのメンバーとともにわかちあう時間のことをさす。この気づきをわかちあうことを通して、他のメンバーからの気づきを聴いたりしながら、参加者自らの気づきをさらに深め、参加者一人ひとりが成長することになる。そのことより、グロウスタイム(growth time)と呼ばれる。「わかちあい」を参照。

原因帰属理論

ケリー(1967)は、他者や自分自身の行動の原因を自分なりに推論する過程を帰属過程(attribution theory)とよび、共変動(covariation)原理を提唱している。

合意(コンセンサス)形成

集団の意志決定には、さまざまなものがある。権限による決定、少数者による決定、多数決による決定、コンセンサスによる決定、全会一致による決定などである。その中の、コンセンサスによる決定を指している。いつも全員のメンバーの意見が一致することはまずないであろう。しかし、しっかり納得するぐらい話し合うことによって、確かに相手の主張も理解し、相互に受容しあえる結論まで結び付けることができるのである。いわば、体験学習によって学ぶことで、この合意形成の仕方を学んでいると言えるかも知れない。

構成的

Tグループやエンカウンターグループなどの非構成的グループ体験に対して、実習などを用いてファシリテーターから何をやるか指示をされるようなグループ体験を構成的グループ体験と呼んでいる。非構成的グループ体験から学習者が学ぶことを促進するファシリテーターのスキルは難しく、一方実習などを使った構成的なグループ体験のファシリテーターは簡単そうに見えて、学校教育の中でも実習などを活用した教育プログラムが普及しはじめている。

心の4つの窓

「ジョハリの窓」とは、「ジョハリの心の4つの窓」ともよばれ、Joseph Luft と  Harr Inghamが1955年に考案したことから、2人の名前を合成してJohariと名付けられている。私自身のことを自分と他者との関わりの中で捉える枠組みとして考えられ、私が知っている部分と知らない部分、他人が知っている部分と知らない部分に分け、4つの領域(窓)『開放の領域』『盲点の領域』『隠している・隠されている領域』『未知の領域』を考えたのである。

コミュニケーションスキル

コミュニケーションのスキルには、いろいろなものが考えられるが、そのひとつに、「効果的コミュニケーションのための5つの要素」として、(1)自己概念、(2)傾聴、(3)表現の明確さ、(4)感情の取扱い、(5)自己開示が、取り上げられている。

コンテント

直訳すれば、内容物となるが、グループで作業している際の“課題”、コミュニケーションをしている際の“話題”を指し、何をしているかの“何”にあたるものを指す。

サ行

シェア

『わかちあい』と同意語と言えるだろう。

自己概念

『わかちあい』と同意語と言えるだろう。

自己知覚理論

ベム(1972)は、人は、自分の態度や感情などの内的な状態を直接知ることができないので、外に現れた自分の行動を観察したり、その行動が生じている状況を手がかりにして、自分の内面を推測することが多いと考えている(自己知覚理論、self-perception theory)。

ジャーナル

体験をした後に、自分自身の気づきなどを記入するふりかえり用紙も重要であるが、一日の体験から学んだことや気づいたことを記入する時間と用紙を準備しておくことはとても大切である。その書き記したものをジャーナルと呼び、何日かをかけた一連のプログラムでは、一日一日の記録(ジャーナル)は自分自身やさまざまな現象を理解するための重要な手がかりになるだろう。

社会的スキル

他者との関係や相互作用をする際に使われる「社会的な技能」と呼ぶことができるであろう。それは、相互作用において当該の人物の目的が達成されるような目的的であり、適切な行動を起こすことを指している。

社会的比較理論

フェスティンガー(Festinger, 1954)は、社会的比較過程論を提唱し、人は、自らの考えや能力を評価しようという自己評価の動因があり(仮説1)、自己評価のための客観的な基準が見つからない場合には、他者の考えや能力との比較を行うことにより自己評価を行う傾向にあり(仮説2)、他者と比較をしようとする傾向は、他者との考えや能力の差に開きがあるほど低くなる(仮説3)といわれている。

小講義

人間関係を学ぶための体験学習のプログラムの構成要素として、(1)集中的グループ体験としてのTグループ、(2)実習を用いた構造的なグループ体験、(3)小講議、(4)ふりかえり用紙や質問紙などのインストルメント(道具)を用いたプログラムの、4つが重要であるといわれている。その中でも、小講議は、体験していることをより概念的に明確化するためにも重要なプログラムとなる。

受容

『わかちあい』と同意語と言えるだろう。

人間関係の中で、この“受容”の問題はとても大切な問題である。他者を受容する、とか自分を受容するといったように使われる。いわば、受容するとは、相手のことを共感的に理解することと言えるだろう。一方で、日常の人間関係に影響を及ぼしている最大の問題は、他者とどのようにつきあうかといった問題に思えるが、実は“自分が自分とどのようにつきあっているか”である。そして、特に、自分の嫌な側面やダメだと思うことを、それも私だとして受容できていることは、日頃の人間関係の中でとても豊かに生活できることになる。

シンポジウム(symposium)

集団討議方法の一つ。数名が、あるテーマで、演説形式で意見の発表を行い、その後、進行役のもとで発表者間の討論を行い、最後に、聴衆一般(フロアー)からの質疑応答や討議を行う方法である。

心理的契約

体験学習を用いた教育や研修において、教育/研修を開催するファシリテーターの研修のねらい(目標)と参加者が参加時にもってきているねらい(参加への期待や目標)が、時として、異なることがある。体験学習が目的的な教育活動であるなら、どのような目的でこの研修/教育が行われているかの契約をしっかり結んでおく必要がある。それは、書面で形式的にかわすというよりも、まさにお互いに了解しあうようなプログラムが開会時に行われ、心理的契約が結ばれることはとても大切になる。

タ行

Tグループ

1946年の夏、米国コネチカット州において、ユダヤ人とアメリカ人の雇用差別の撤廃を推進するために、ソーシャルワーカーや教育関係者などが集まり、リーダーシップなど人間関係能力の向上をめざしたグループトレーニングがTグループのはじまりとされている。そのワークショップにおいて、研究者や観察者がグループ状況について行っているミーティングに参加者が参加することを希望し、レヴィンがそれを了解し、共にグループの相互作用を討議した。その討議の中では、それぞれの認知には違いあることや、今、その場で話し合っている人たちの間で起こっていることにも焦点があたることになった。そのことから、その人自身の行動、他のメンバーの行動や集団行動について理解を深めていくことができたのである。結果、グループの相互作用過程において「今ここ」で生起している現象に対する認知と解釈が各メンバーで異なり、そのことをデータとして吟味することにより、刻々と変化していくグループの真実なプロセスを理解することができ、そのことを通してグループが成長していくことを発見したのである。
  今では、Tグループといった場合に、狭義にはTグループ(未知のメンバーで構成され、何を話せばいいとか、誰かがどのようにすすめるかなど一切決まっていないグループ)そのものをさすか、もしくはそのセッションをさしている。そこでは、“今ここ”での人間関係に気づき、自分のことやグループのことを学ぶセッションであり、一般に、90分前後で1セッションが構成される。一方広義には、Tグループセッションも含め、実習を使ったセッションや小講義などからなる何日か宿泊を伴う一連のプログラムからなるトレーニング全体をTグループと呼ぶこともある。
※日本語で訳されたTグループのバイブル的存在としての図書として、《感受性訓練-Tグループの理論と方法-(日本生産性本部)1971》があるので、関心をもたれた方にはお勧めします。【2002.08.02 記】

TPリーダーシップ

リーダーシップには2つの働きがあることが一般的に言われており、その2つの機能をT機能:集団の課題遂行を指向する働き(Task)とP機能:集団のメンバー(人間関係)に配慮することを指向する働き(People)と呼んでいる。PMリーダーシップ理論のP機能がT機能、M機能がP機能にあたると考えるとよいだろう。「リーダーシップ」参照。

ナ行

人間関係トレーニング

ラボラトリートレーニングと同意語。体験学習が始まったのは、1946年の夏、米国にてあるワークショップでのプログラムがきっかけで生まれたと言われている。それは、Tグループ(Tはトレーニングの略)と呼ばれる“今ここで”起こっていることを通して学んでいく体験学習であり、翌年の1947年の夏から「基礎的技能トレーニング(Basic skills training)」と呼ばれて開催、その後NTL(National Training Laboratories)を本拠地として「人間関係ラボラトリー(Human relations laboratory)」へと発展していっている。その言葉が日本に入ってきて、ラボラトリートレーニングとか、人間関係トレーニングと呼ばれるようになった。

ハ行

バズ・セッション(buzz session)

集団討議方法の一つ。大きな集まりの中で、例えば途中や終わりに、6人ぐらい小グループに分けて討議をする。比較的短時間で意見や質疑応答をしながら、小グループ単位でまとめていく。後で、全体集会で報告することもある。バズというのは、蜂が飛び回る時のように、会場がブンブンいっているように聞こえることからこの名が付けられている。参加者が多いときにとかく、討議内容の理解が十分できなかったり、参加メンバーが意見を言うチャンスが少ないのを補うことができる。

パネル・ディスカッション(panel discussion)

集団討議方法の一つ。聴衆の前で、あるテーマについて壇上に上がった、数名のパネルメンバー(パネルとは、元来、陪審を意味する)が進行役のもとで、討議を行い、その討議をもとに、聴衆一般(フロアーと呼ぶことがある)から質疑応答を加えながら、全体討論を行う方法である。

PMリーダーシップ

リーダーシップには2つの働きがあることが一般的に言われており、その2つの機能をP機能:集団の課題遂行機能(Performance)とM機能:集団の形成維持機能(Maintenace)と呼んでいる。三隅二不二氏は、いずれの働きに関しても十分に機能するようにリーダートレーニングを行うことが望ましいとも述べている。「リーダーシップ」参照。

非構成的

Tグループやエンカウンターグループに代表されるようなグループ体験を非構成的グループ体験と呼ぶ。グループメンバーだけは決まっているが、そのグループで何を話せばいいか、誰がどのように物事を決めたり話したりすればよいかなど、一切決まっていない状況からスタートするグループ体験を『非構成的』グループ体験と呼ぶ。

ファシリテーター

体験学習の始まりにおいて、「人間関係トレーニング」とか「ラボラトリートレーニング」という言葉が使われている。その際に、教育担当者をトレーナーと呼んでいる。まさに、運動能力をトレーニングするための指導者としてトレーナーという言葉は適切なのだが、時として「トレーナー=訓練者」という響きに抵抗を感じさせることになる。そこで、最近は「ファシリテーター=促進者」という言葉が比較的多く使われるようになってきている。この時の促進者とは、学習者の学習を促進する役割をもった人という意味で使われている。

フィードバック

もともとは、自動制御回路などの電子工学の分野の用語。人間関係の中で、それぞれの行動が他者にどのような影響を及ぼしているかに関する情報を提供したり、受け取ったりする情報の相互交換をフィードバックを呼ぶ。人間関係トレーニングの場では、他者を自分自身を映し出す鏡であるというような表現をして、どのように他者に映っているかの情報を得ることからも自己への洞察を深めていくことになる。

ふりかえり

なんらかの体験をした後、自分の中に、相手の中に、自分と相手との関係の中に、またグループの中にどのようなことが起こっていたかに気づこうとする作業を一般に呼ぶ。しかし、それだけでなく、気づいた事柄が何故起こったのか?今後の課題としてどのようなことを試みていけばいいか?など、体験学習の循環過程のステップを踏んで、考察を深めていく作業も、すべて『ふりかえり』の作業と言える。

ブレインストーミング(brain storming)

1939年、オズボーン(A.F.Osborn)により、考案された創造的集団思考法です。5~10名ほどのメンバーからなる小集団に対して課題を与え、できるだけ早く、できるだけ多くの課題解決のためのアイデアを出すようにする方法をさしています。それには、(1)他のメンバーのアイデアを批判したり評価したりしないこと、(2)実行可能か不可能かという判断は抜きにして、自由奔放に思いついたアイデアを出すこと、(3)アイデアは多いほどよいこと、(4)他のメンバーのアイデアに触発されて、改良を加えたようなアイデアも自由に出し合うこと、などを奨励したルールのもとで、司会者と記録係を決めて、開放的な雰囲気で進めていくミーティング方法です。

プロセス

直訳すれば、“過程”となるが、体験学習では、“関係的な過程”と訳す方が分かりやすいだろう。まさに、コンテントとして、仕事をしているグループの中で起こっている関係的な側面で、どのような意志決定をしたか?誰がどのような影響を与えているかなど、また、コミュニケーションで起こっていること、たとえば、誰がどのような話し方をしているか?聞き方をしているかなど、プロセスの視点はたくさんある。まさに、このプロセスが見えるようになり、そのことから絶えず学ぶことができるようになることが体験学習の目的でもあると言える。

プロセッシング

ふりかえりと同意語と言える。プロセス(process)とは、過程という意味と、もう一つ、『処理をする』という意味がある。いわば、体験したデータを集めて、それを分析し、今後の体験のために仮説化をする、行動目標を立てたりして計画をすることの作業を指している。

プロテジェ

メンターの対語として、被支援者、被教育者、被後見人という意味のフランス語を語源とする「プロテジェ(Prote’ge’)」という言葉が使われる。メンティー(Mentee)と同義語。

ベーシック・エンカウンター・グループ

非指示的カウンセリングの創始者であるカール・ロジャースが、カウンセラー養成から始まったグループアプローチを「ベーシック・エンカウンター・グループ(Basic encounter group)」と称し、グループを用いた人間関係トレーニングがアメリカ西海岸を中心にして発展していった。そのグループ体験は、一人ひとりの人間の存在を尊重し、“今ここ”の関係に生きる時、メンバー相互に驚くほどのエネルギーの集中が起こり、その時個人やグループの変化成長が起こることを彼自身発見していったのである。エンカウンター・グループと一般に呼ばれることもある。

マ行

メンター

語源は、ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』に登場する人物「メントル(Mentor)」という男性の名前である。彼は、オデュッセウス王の僚友で、王の息子テレマコスの教育を託された有能な賢者である。『オデュッセイア』には、メントルは王の息子にとってよき指導者であり、よき理解者であった人物であると描かれている。支援者、指導者、理解者、教育者といった包括的な役割をもった人物をさす。

メンターリング

メンタリング(mentoring)とは、知識や経験が豊富な人々(メンター、mentor)がまだ未熟な人(プロテジェ、Protege)に対して、キャリア形成の側面と心理・社会的な側面から、一定期間継続して支援するシステムを意味している。

メンティー

プロテジェと同義語。

ヤ行

四つの懸念

ギブ(Jack R. Gibb)が提唱した理論。彼は、Tグループの体験を重ねていき、グループの成長と個人の成長の発達過程とその関連について考察している。グループは、初期の頃、4つの代表される懸念-受容懸念、データ流動の懸念、目標形成の懸念、社会的統制の懸念-があり、いわゆる不信頼な不安な関係である。日常は、そのような不信頼な風土故、一人ひとりが自由に行動できなかったりするが、Tグループのような集中的グループ体験を通して、その不安(懸念)を低減することができれば、それだけグループには信頼の風土が生まれ、その中で個人は本来の欲求に基づき行動し、新しい行動を試みることができ、成長することができると考えている。

ラ行

ラブ(Lab)

ラボラトリー(Laboratory)の略。体験学習の始まりとされる、Tグループに関わる文献(感受性訓練-Tグループの理論と方法-ブラッドフォードら著、三隅二不二監訳、日本生産性本部)の中で、教育における2つの技術革新として、Tグループの発見と、トレーニング・ラボラトリの発見があると述べている。自分が主体となって、自分の人との関わり方を実験的に学ぶ場として、トレーニング・ラボラトリが大きな機能を果たすことを述べている。ラボラトリートレーニング、ラボラトリーメソッドを参照のこと。

ラボラトリートレーニング

人間関係トレーニングと同意語。体験学習が始まったのは、1946年の夏、米国にてあるワークショップでのプログラムがきっかけで生まれたと言われている。それは、Tグループ(Tはトレーニングの略)と呼ばれる“今ここで”起こっていることを通して学んでいく体験学習であり、翌年の1947年の夏から「基礎的技能トレーニング(Basic skills training)」と呼ばれて開催、その後NTL(National Training Laboratories)を本拠地として「人間関係ラボラトリー(Human relations laboratory)」へと発展していっている。その言葉が日本に入ってきて、ラボラトリートレーニングとか、人間関係トレーニングと呼ばれるようになった。

ラボラトリーメソッド

体験学習による学習方法をラボラトリーメソッドと呼ぶことがある。直訳すれば、“実験室法”ということになる。実験室というニュアンスからは、第三者が誰かを被験者として実験をするということなのだが、体験学習においては、学習者自身が、まさに新しい学習の場に入り、自分が自分のためにいろいろ試しながら(実験しながら)学ぶことを奨励することから、ラボラトリーメソッドによる学習と呼ばれることがある。

リーダーシップ

リーダーシップとは、「集団の目標達成の過程の中で、コミュニケーションのプロセスを通して行使される対人的影響力」といえます。要するに、メンバー一人ひとりの行動がどのように影響しあっているかということです。それには、メンバーの役割のとり方、相互の影響関係の度合いとその内容、また、リーダーが固定化しているかどうかなどを見ていくことから、リーダーシップのありようを調べていくことができます。リーダーシップに関してはいろいろな考え方がありますが、集団の機能面から考えて、一般に2つのメンバーの働きをリーダーシップの2大機能と言えるでしょう。それは、★課題達成を指向したものと、★集団の形成・維持を指向したもの、です。
リーダーとリーダーシップとは異なります。必ずしも、リーダーがリーダーシップを発揮しているとは言えない状況もあるでしょう。

リソース

直訳するなら、資源と言える。いわば、体験学習においては、体験を意味あるものとするための資源を全て指し、教材もリソースと言えるし、テキストなどもリソースと言えるし、教育プログラムを実施しているスタッフも人的リソースと言えるであろう。このように、体験から学ぶための援助的資源すべてをリソースと呼ぶ。

ロールプレイング

役割演技と訳されるものである。日頃の体験と異なる役割を担って実験的に体験してみる(役割を演じてみる)ことで、新しい自分のありようを発見したり、自分が役割を担った人の内面を理解したりすることができる実習をさす。

ワ行

わかちあい

英語のshareの邦訳である。体験学習では、体験後の学習者一人ひとりが気づいた事柄を話し合う作業を指しており、そのことを『わかちあい』と呼んでいる。しかし、巷の自己啓発セミナーでは、大勢の前で自分の感情を吐露することを『わかちあい』と呼んだり、研修に参加して良かったと言う体験を『わかちあう』ということで勧誘をすることを指している場合もあるので、この言葉の使用には要注意である。「グロウスタイム」を参照。