Tグループとは No.080 誕生から75年さらなる発展のためのパラダイムシフトに向けて:ナラティヴ・アプローチ(Narattive Approach)とは(8):Kouさんの9つの視点(Part_5)

(6)支配的な文化的ストーリーは、人生において変化を求める人々に苛酷な制限を課す

  支配的なディスコースが、私たちにものすごい圧力をかけてきます。Kouさんは、「よき母親」にまつわる支配的ディスコースの苛酷さを自著の中で記述しています。「よき母親」には、子どもの教育すべて(学校、家庭、学習塾など)にわたりケアを求められているのです。「よき母親」として結婚相手からさえも求められ、「よき母親」にまつわる支配的なディスコースは、容赦してくれないのです。

 この支配的ディスコースの要求に満たせない時、回りから責められることがあったり、自分自身に対する不全感や不能感に苛まれることが起こるのです。それは、どこから来るのか特定できな「視線」を感じて、他の人たちが自分を判断する時にも影響していると思い込んでしまうのです。

 「よき教育者」「よき企業人」「よき営業マン」「よきカウンセラー」、「よきコンサルタント」と、いずれの立場に立とうと、それぞれがもつ支配的な文化的ディスコースからの圧力を感じて、私たちは生きており、それらに応えられないときに不全感、不能感を感じてしまい、生きにくくなってしまっているのです。
 現在の社会にあって、学校の教員の方のうつなどの精神疾患による休職者が増えていることなどもこうした「よき教員」としてあるべき姿であるディスコースに強い影響を受けているのではないかと想像してしまいます。

 単一のディスコースだけでは無く、さまざまなディスコースの可能性を、会話を通して生みだすかかわりができるように支援者である私たちがなることが必要になるのでしょう。そのためにも、目の前の人を苦しめているディスコースはどのようなものであるか気づき、そのディスコースからの影響やディスコースへの影響を言葉にすることによって、一つのディスコースから解放されていくことが大事になるだろうと思います。(つづく)