Tグループとは No.078 誕生から75年さらなる発展のためのパラダイムシフトに向けて:ナラティヴ・アプローチ(Narattive Approach)とは(6):Kouさんの9つの視点(Part_3)

(4)近代社会は、監視と精査によって維持される社会規範によって特徴づけられている

 私たちの社会では、人から絶えず見られ、絶えず評価されているという感覚を持っているということです。このことは、これまで生きてきた自分自身をふりかえってみても、「人様が見ているから、このことはできない」と考えて行動したりしなかったり、前述の「ディスコース」を気にしながら自分の行動をコントロールしてきたことは、たくさんあります。

 ミッシェル・フーコーは、このような現象をあるパノプティコンと呼ばれる刑務所の設計・牢獄の建物にたとえています。牢獄は、円の中心に向かって開かれており、中心部に看守の部屋が設けられていたのです。看守の部屋から全方向を見ることができる設計なのです。看守の存在がなくても、いつも見られているという感覚を伴うのです。これを、フーコーは「視線」と呼びました。

 私たちの社会でも、人から絶えず見られ、絶えず評価されているという感覚を持っています。私たちの日常で悩まされる拒食症、引きこもり、不登校、うつなどさまざまな現象は、この「視線」がもたらす「見られることへ恐れ」や、「ほかの人はどのように思うだろか」ということが会話の主要なテーマなると、Kouさんは言っています。ナラティヴ・セラピーでは、相談に来られた方と「その人の気のせい」と片付けられるのか、それともどうして人の目が気になるのかなどの会話を共にすることが大切になります。(つづく)