Tグループとは No.063 誕生から75年さらなる発展のためのパラダイムシフトに向けて:Marshakら(1994)のコヴァート(隠れた)プロセスモデル(Covert Process Model)(Part 1)

「対話型組織開発――その理論的系譜と実践」(B.R.ブッシュ & R.J.マーシャック, 2015、中村和彦(訳)2018)の編者であり、対話型組織開発の第一人者でもR.J.マーシャックさんが提唱する「コヴァート(隠れた)プロセスモデル」について4回にわたり、紹介したいと思います。社会構成主義をベースにしたチームづくり、組織づくりは有用なモデルを提唱してくれていると思います。

 私たちが、グループ、チーム、組織でより効果的に働くためには、自分自身の行動の元にある、また隠れた側面を見つけ出し、それに対処する能力が必要となります。個人やチーム、組織に隠れた、時には無意識のダイナミックスに気づき、対処することができれば、個人、チーム、組織の生産性と効果性を高めることができます。

 R.J.マーシャック(Marshak)とJ.H.カッツ(Katz)(1994)が、個人、チーム、組織の隠れた(コヴァート)プロセスの多元的なモデルを提唱しています(図)。このモデルでは、すべての社会システムには、知覚と行動に影響を与える意識的、無意識的、および意識外の側面があるということを前提としています。意識的な側面は明白な(overt)領域と隠れた(covert)領域の両方があり、無意識と意識外(out of awareness)の側面は、通常、システムに「隠れて」います。

体験の文脈または場

 マーシャックらは、コヴァート(隠れた)プロセスを理解するための最初のステップは、焦点となるシステムの全体的な文脈を考慮することであると述べています。
 体験の場は、宇宙に存在するすべてのもののサブセットとなり、人生経験によって影響を受けます。個人の場合には、年齢、教育、社会経済的地位、職業上のアイデンティティなど、グループや組織の場合は、ビジネスの種類、提供する製品やサービス、グループや組織の環境要因などが考えられます。体験の文脈や場によって提供される限界を考えるには、検討する際にシステムによって何がオープン(overt)で、何が閉鎖的(covert)であるかを判断するプロセスから始める必要があると考えています。

 例えば、長い歴史をもって独裁的な上司がいるグループでは、代替的なリーダーシップスタイルで仕事をする場を創ることや100年の歴史をもつ規制された業界の組織では、規制緩和や市場競争の現実を文字通り受け入れにくいということが起こるでしょう。(つづく)