Tグループとは No.059 グループプロセスへの働きかけ:Reddy(1994)の介入の立方体をヒントに介入する

 Tグループのような非構成なグループ体験でも、また実習教材を用いた学習グループ体験でも、また企業における仕事チームの場合でも、トレーナー、ファシリテーターやコンサルタントなどがグループにどのようにかかわるか、働きかける(介入する)かは、ファシリテーターやコンサルタントにとって重要な任務であり、難しい課題です。

 津村(2010)は、ファシリテーターとは「プロセスに働きかける (介入する)ことを通して、グループの目標をメンバー(成員)の相互作用を通して明確にし共有し、その目標を達成することと、メンバー間の相互信頼関係を創り出すことを促進 (ファシリテート)する働きをする人」と定義しています。

 ファシリテーターにとって、まずグループのプロセスに気づくことが第一の課題になりますが、そのプロセスに気づいた後、どのようにグループやグループのメンバーに働きかける か、それは問いかけであったり、フィードバックであったりと幅広いレパートリーをもつ必要があります。

 そのレパートリーを広げるための視点として、Reddy (1994,津村監訳,2018)の介入の立方体モデルは有用だと思われます(図)。立方体モデルとは、働きかけの【焦点づけ】× 【タイプ】×【強さ】の3次元から構成されています。

 【働きかけの焦点づけ】とは、グループ、対人間、そして個人と3つの介入の焦点を考えています。グループへの焦点づけとは、グループの中で起こっているプロセスで、グループ全体に焦点づけて働きかけをすることです。対人間への焦点づけとは、特定の2人や特定の人たちの間で起こっているプロセスに焦点づけて働きかけることです。個人への焦点づけとは、グループ体験においてメンバー一人ひとりの中で起こっているプロセスに焦点づけて働きかけることをさしています。Reddyによると、働きかけのインパクトは、グループ、対人間、個人の順に強くなると考えられています。

 【働きかけのタイプ】とは、(1)気づき確認的(Cognitive)働きかけ、(2)アクテイビテイ/スキル提案的(Activities/Skills)働きかけ、(3)行動描写的(Behavior Description)働きかけ、(4)感情反射的(Emotional Refective)働きかけ、(5)現象解釈的(Interpretive)働きかけのことで、これら5つのタイプの働きかけを、Reddyは提唱しています。

 (1)気づき確認的(Cognitive)働きかけとは、“今ここ”で起こっているプロセスに光を当てるために、グループやメンバーに、気づきを起こし、確認し、共有するために問いかける働きかけです。
 (2)アクティビティ/スキル提案的(Activities /Skills)働きかけとは、具体的な行動や活動、進め方などを提案したり、勧めたりする働きかけです。
 (3)行動描写的(Behavior Description)働きかけとは、メンバーやグループの行動を記述し、“今ここ”で起こっている現象を具体的に描写して伝える働きかけです。
 (4)感情反射的(Emotional Reflective)働きかけとは、メンバーやグループの感情や気持ちに焦点づけ、対象者の感情を鏡に映すように伝える働きかけです。
 (5)現象解釈的(Interpretive)働きかけとは、メンバーやグループの中で起こっているプロセスについて、分析し診断や解釈を伝える働きかけです。

 3つ目の次元は、働きかけを行う行為の【働きかけの強さ】(弱い・中程度・強い)のレベルです。Reddyは、ファシリテーターやコンサルタント、トレーナーの意図によって、【働きかけの強さ】を変化させる必要があると述べています。働きかけの強さを調整(コントロール)するために、どのような言葉を使うか(言葉の選択)、どのくらいの強さで発言す るか(音声の抑揚)、グループやメンバーに対する姿勢などの非言語的な手がかりをどのように使うかといったことをあげています。

 働きかけの強さは、ファシリテーター自身の感受性や人間観などが影響し、まさに自己をいかに活用するか(use of self)が重要になります。働きかけの強さが強くなるほど、リスクは大きくなります。一般的に、グループへの働きかけから個人焦点への働きかけになるほど、インパクト(影響力)は大きくなるだろうとReddyは述べています。(つづく)