Tグループとは No.050 グループワークには3つの機能(効果)メカニズムがある
Corsini & Rosenbergs(1963)は、集団精神療法はじめグループワークにかかわる300あまりの論文をレビューし、治療過程におけるグループ体験の効果メカニズムの分類を試みています。これらは、種々のグループワークにも共通に見られるメカニズムであると考えられます。Bion(1961,対馬訳,1973)や大利(1980)による紹介をもとにしながら、グループのメカニズムを記しておきたいと思います。
Ⅰ.知的要因(intellectual factor)
1.観察効果(spectator therapy)
メンバーがグループ内での他のメンバーの言動を見たり聞いたりして他者の問題を知り、またその解決の過程を観察することによって、自分自身の問題を異なる視点からとらえることを学びます。
2.普遍化(universalization)
他のメンバーも同じような問題をもっていると認知することにより、自分だけが特異な存在ではないことを自覚し、いわゆる世界が広がり、大きな視野で自分の問題や悩みを考えることができるようになります。
3.知性化(intellectualization)
メンバーが自分の問題や悩みを客観的に把握したり知的に解釈したりすることができ、問題解決への洞察を深める過程であり、不合理な不安が減少します。
Ⅱ.情緒的要因(emotional factor)
1.受容(acceptance)
リーダーがメンバーを、またメンバー同士がお互いに相手を尊重し、共感し、あたたかく受け入れ、信頼の風土が生まれることによって、メンバーは自信と安定感を得ます。
2.利他性(愛他性:altruism)
受容に近いメカニズムで、メンバーがお互いに援助者の働きを積極的に担います。メンバーに対してあたたかい激励や親切な助言を行い、メンバーをあたたかく包み込むような積極的な行動が生まれます。
3.転移(transference)
個人的なアプローチの場合と異なり、リーダーに対する強い愛着や同一化といった転移だけでなく、メンバー相互の感情的な結合が生まれ、メンバー相互の愛情や同情が生まれます。
Ⅲ.行為的要因(actional factor)
1.現実吟味(reality testing)
メンバーは、脅威のない安全な雰囲気の中で、メンバーは自分の過程や対人関係の問題などを再現したり、自分自身の新しい行為を試したりしながら、現実的な生活場面での対人的な行為の仕方を学びます。
2.換気(ventilation) 日常生活において罪や非難をおそれて、抑圧されている感情や考えが受容的な雰囲気の中で解放され、表現され、情緒的な緊張の解消が可能になります。いわゆるカタルシスのメカニズムです。
3.相互作用(interaction) リーダーとメンバー、あるいはメンバー同士の相互作用をさしており、明確に性格づけることは困難なメカニズムですが、グループ内の相互作用がメンバーの精神の健全化に効果をもちます。
以上のことは、さまざまなグループワークによる効果を検討する際のメカニズムとして大切な視点を提供してくれています。また、グループの成長・発達過程を理解することも、グループワークのもつ機能(効果)メカニズムを考えるために重要になるでしょう (村山,1977;津村,1990)。(つづく)