Tグループとは No.012 プロセスとは、自分の体験(行動・思考・感情領域で)を語ること
米国留学の大きな目的は、Tグループの研究をすることでした。同僚のY氏から教えていただいたMassachusetts大学Amherst校のG.Weinstein教授と連絡をとり、Visiting Scholarで受け容れいていただけるとの了解を得て、渡米しました。
初めてWeinstein先生にお会いして、お話をすると、以前はTグループを行ったり、Tグループの研究もやっていたりしたけども、「今はもう止めた」とのこと(´Д`)。そのお話を聞き、慌てた私は戸惑いの表情を見せたことと思います。Tグループの実践や研究をやりたいならば、「隣の研究室にA教授を紹介してあげるよ」と、同僚の教授を紹介する話になりました。正直ほんの少し迷ったのですが、せっかくWeinstain先生のところに来ているのだから「一年間学ばせてください」とお話をして客員研究の場を作って(具体的には研究室を確保して)いただきました。
よって、正直初めて「セルフサイエンス」という言葉や「Education of the Self」という授業名と出会うことになったのです。なんとその場あたり的行動をしていることか?!まあ、それが私の人生と開き直り、一年過ごすことになったのです。
Weinstein先生は、Tグループに参加した人に、「Tグループってどんな体験でしたか?」「何を学びましたか?」と聞くと、「良かった!!」「一度行ってみるといいよ!!」などと話はするけれども、Tグループの体験を自分の言葉で語れないことに疑問を感じ、それでは学んでいると言えないのではないか、という主張されたのです。
そうした体験から、彼は、主要な認知発達理論、道徳意識の発達理論などを参考にしながら、「自分の体験を語る」にはどのようなことが必要なのか、そしてその語りには発達過程(ステップ)が考えられるのではないかと、仲間の研究者たちと研究を行っていたのです。
Weinsterin氏と仲間の研究者は、「自己概念(Self Concept)」と「自己知識(Self Knowledge)」を識別しようとしています。前者は客体としての自己をどうとらえるか?ということであり、「Who am I ?」として問われ、それに答える言葉で語る私です。「私は人と話をするのが苦手です。」「私は数学が好きです。」といった具合に。後者は、“今ここ”で、もしくは“あの時あそこ”で私が主体としてどのような体験をしているか?したか?という問いに対する答えです。「あなたはどんな体験をしましたか?」と問われて答える言葉です。「相手の話を確り聞こうと思って、相手の方をじっと見ていました。」「私は、恥ずかしくて顔を赤らめています。」など私が体験していること、体験したことを語ることを指しています。
私の体験を記述する際に、3つの領域で語ることができると彼らは述べ、「行動」、「思考」、「感情」を紹介します。この3つの要素は、多くのジャーナルを提出してもらい、sれらを整理・分析することを通して、この3つの領域を見出したのです。
その3つの領域の体験をできる限り丁寧に語ることができるようになるトレーニングプログラムを考えたのが、マサチューセッツ大学院での授業科目にある「Education of th Self」というプログラムです。その学びのステップを彼らは「トランペット・セオリー」とよび、8つのステップを考えており、そのステップの初期の段階で、「自分と対峙すること」と「対峙した自分を3つの領域で描写する」ことを学びます。
つんつんは、ラボラトリー体験学習の重要な視点である「コンテント」と「プロセス」という視点から、「自己概念(Self Concept)」と「自己知識(Self Knowledge)」を考えてみました。「私はこんな私です」と語っている「自己概念(Self Concept)」はコンテントであり、「その話をしているときにこんな体験をしています。もしくはしていました。」と語るならば、それはプロセス「自己知識(Self Knowledge)」の視点から言葉にできていることになると考えました。それ故、いかに自分の体験を語ることができるようになるかということと、自分のプロセスを語ることは同義語と考えてよいのではないかと考えています。それは、対人関係においても、グループにおいても、何を体験しているか?それがプロセスと言えるでしょう。
G.Weinstein先生と出会ってから、「プロセス」という言葉を説明する際に「プロセスとは体験していること」であると、近年は、説明するようにしています。
具体的なプログラムでは、研修のはじめに短い自己紹介の体験をした後に、「あなたはどんな体験をしましたか?」と問いかけ、語って頂いたことを板書しながら、「コンテントとプロセス」のお話をしています。手前味噌ですが、参加者には「プロセス」とう視点がわかりやすくなったのではないかと考えています。私には、セルフサイエンス、Weistein先生との出会いから学ばせてもらった最初の大きな収穫でした。(つづく)