Tグループとは No.011 「Tグループ with スキー」を体験する
日本では、Tグループにメンバーでもトレーナーでも参加していたのは、ほぼ5泊6日の合宿形式である程度スタンダードができている研修スタイルのものでした。Tグループのセッションが13,14セッションあり、開会と閉会、その間に全体会としていくつかの実習教材を用いて体験学習とミニレクチャー、夜の集い(JICE時代は礼拝の時間と呼ばれていました)最終日の前日午後あたりから全セッションをふりかえる全体会などで構成されていました。
せっかく米国に来たのだから、まずはNTL(National Training Laboratories) の主催するTグループに参加することは必須でしたが、できれば違うスタイルのTグループに参加してみたかったのです。そこで、NTLのプログラムガイドを見ていると、フロリダ州で「Tグループ With Tennis」、コロラド州で開催される「Tグループ With Ski」の、2つが興味深いTグループとして載っていました。少し迷ったのですが、3月という季節を考え、また当時スキーにはまっていたこともあり、スキーとTグループの組み合わせでどのように運営されるのか、テニスも同様に参加したかったのですが、コロラドを選びました。着いていみると、Vailスキー場は、スキーのワールドカップ大会も開かれたほどの大きなスキーゲレンデとたくさんのホテルとレストラン街などがある大きな町でした。
スケジュールは、写真をご覧ください。参加したプログラムは、1986年3月8日(土)から14日(金)までの6泊7日の期間に開催されたTグループです。全体的に見ると、私が日本で経験しているTグループと違うのはかなりレクチャーの時間があるということと、構造化した実習体験が含まれておらず、午後のプログラムはグループでほぼスキーの時間であり、夕食前にスキーから帰ってきて男女がともに大きなバスタブに入り(もちろん水着を着て(笑´∀`)!!)、その後全体会セッションが行われました。それと、オープニングの時にすでに研修の全体スケジュールが示され、参加者はプログラムの大枠を知ることができました。
基本的には、毎朝ミニレクチャーがあり、午前中はTグループセッション、午後はスキー、スキーから帰ってきてからバスタブで汗を流し、夕食前に全体会セッション、夜はTグループセッションという流れでした。
毎朝のミニレクチャーは、「JOHARIの窓」、「知覚と判断:コミュニケーションの阻害要因」、「人々の間にあるDiversityがテーマで、ディスカッションとインベントリーを使って自分のDiversityをふりかえる」、最終日近くには「グループの発達過程」などが扱われました。
特に興味深いのは、午後のスキーからホテルに帰ると、男女ともにバスタブに入ったあとの全体会でした。「フィードバック」に関するミニレクチャーがあったあとに、相互に自分たちが作ったスキーのグループのふりかえりがありました。グループを作るときに、広いVailのゲレンデの地図を見ながら、レッドの上級者コースが滑れる人、ブラックの中級、グリーンの初級などを自己申告をしてグループ分けして出掛けたのです。滑り始めてみるとなんと自己評価・自己表明がいい加減なものか!私のステレオタイプが入っているかも知れませんが、欧米人の多くは「おれはうまい!!」と主張し、アジア系の私は「あまりうまくないので・・」と話して、グループを分けたものの、実際に滑ってみると現実にはかなりのギャップが・・・。欧米人のへっぴり腰のメンバーいたり、結構すいすいと滑るつんつんがいたり、いかに自分を適切に査定し、自己表明することができるようになることが大切か、そのためのトレーニングが必要かを実感した次第です。
その後のバスタブ後の全体会は、「Meyers-Briggs Type Indicatorを使った分かち合い:その後、今日の滑るコースを決めたのは誰か?(意思決定)誰がグループにどんな影響を与えたか?(影響過程とリーダーシップ)のふりかえり」、「コンフリクトの意味と解決を巡って」、そして最後の全体会は「Intimacyを巡って:Tグループセッションも終了間近ゆえに別れを前にして」などが行われたことは、とても興味深く、魅力的でありました。スキーというグループでの体験をTグループ体験と重ねながら学ぶこと、とりわけミニレクチャーと体験のふりかえりがその鍵になっていたことは明らかでした。
是非、日本でも、「Tグループwith Ski」「Tグループ with Tennis」などやってみたいと考えながら早35年が経ってしまいました。きっと、そのほかにもさまざまな活動と共にTグループの運営は考えられるのではないかと思っています。スキーなどリアルな活動が伴うことで、Tグループの体験がよりリアルに受け容れられ充実するのではないでしょうか。(つづく)