Tグループとは No.007 つんつん、ワーストワンになる!!

 今回は、Tグループそのものの話ではないのですが、自分の中では衝撃的な出来事だったので書くことにしました。

 1977年に、南山短期大学人間関係科に非常勤で迎えられて授業に参加したときのことです。4人の教員とチームティーチングで、毎回スタッフミーティングを念入りにしながら、2コマ続きの授業で学生のみなさんに体験学習のプログラムを提供していました。

 そうした中で、ある日、2コマの授業を終え、共同研究室に帰って来ていたつんつんを学生が教室(私の担当でないグループの教室)に来るように呼びに来ました。教室に行くと、今日の体験学習のプログラムについて、「意味がわからない」、「なんのためにこうしたことをやっているのか」、と団交さながらの教員への学生の詰め寄り状況でした。

 当時は(当時からかもしれませんが)、つんつんはとにかく、たとえば15分導入、30分実習、15分ふりかえり用紙記入、20分わかちあいなどとスタッフミーティングで決めたとおり、授業を進めて共同研究室に帰って来ていたのです。それにしても、その当時の学生は“生き”が良かったです(笑´∀`) 骨があるというか、まっすぐというか、とにかく40年あまり経った今でもその時の学生とはお付き合いをさせていただいたいるほどの関係(お付き合いと「お」を付けても十分な対等な関係)になっています。気持ち的には「同期」って感じです!!

 教員を学生が囲む会話の中に津村も立ち会うように言われて、話しを聞いていると、学生が「今日の授業の意味はなんですか?」と質問すると、ある教員が「君はどう思う?」と応える。またある学生が「先生はどんなことを考えて、この授業をやっているのですか?」と聞くと、もう一人の教員が「君はどう思う?」と返すのです。そばに居て腹立たしくなったつんつんは、「あれだけミーティングしてから授業をやっているのだから、授業のねらいを話せばいいじゃないですか?!」と教員に少し興奮気味に(ちょっと切れ気味で)話したことを思い出します。これは、少々つんつんのデフォルメした記憶かも知れませんが・・・。当時そのような反応をすることは、学生側にきっと立っていただのでしょうから、学生との距離感はもちろん近くなっていたと思います。

 その後常勤になる前にTグループを経験し、そして常勤の講師として授業のプログラムを考え、実施している間に、前述のように教員が対応したその教員の意図することが少しずつわかって来始めました。当時の「君はどう思う?」という質問も、こちら(スタッフ)の意図や考えではなく、学生がどのように受けとり、学生にとっての見方や考え方を大切にしようとしていたのだろうと。

 そうして数年経ち、ある期の学生の卒業合宿(ニンカンでは、入学時に生活合宿5泊6日、ワークショップ合宿5泊6日、Tグループ合宿5泊6日、卒業合宿5泊6日と、少なくとも2年間で4回は集中授業合宿が開催されていました)の中で「教員のワーストテン」を選ぶといった企画を学生が行いました。その結果、つんつんがワーストワンに選ばれたのです。顔は笑いながら、ちょっとザワザワな感じが隠せませんでした。

 あらためて、なんで私がワーストワンなのか?ふと思い起こすと、なんと「君はどう思う?」と学生からの質問に結構応答している自分に気づいたのです。学生が関心をもっていろいろと質問してくれても「君はどう思う?」と。その応答は学生を尊重するつもりであったとしても、学生にとっては、つんつんの考えや思いを聴くことができず残念な思いをさせていただのだろうと思います。その結果、つんつんの姿が見えない遠い存在になっていたことが、「ワーストワン」を大きな要因だったようです。

 また、自分のことを開示せずに、質問だけ繰り返す行為には立場が対等な関係というよりも、相手に応えさせる関係が生まれていたかも知れません。いかに質問をするか、それがフラットな関係、対等な関係としてコミュニケーションをするかは教員と学生、トレーナーと参加者、それぞれの関係の中でとても大切な課題だと考えることができました。

 学生との関係づくりの中で、私自身をちゃんと示すこと(プレゼントすること)の大切さを教えてくれたのは学生でした。ありがたいことです。
 このことをTグループの中のトレーナーに当てはめて考えてみると、Tグループの中で、トレーナーは質問はするけれども自分のことをどのぐらい開示をしているのだろうかと。ともすれば、参加者のためにということで質問をするけれども、それに対する自分の思いや介入の意図などを明示できているだろうか?と。関係を創るということは双方が素朴に“今ここ”での自分を表現することが大切なのだろうと教えてもらったのでした。(つづく)