ラボラトリー体験学習を考える:BEGと比較しながら(6)
このシリーズのお話も、第六弾まで来ました。重複した話題もあるかもしれませんが、少しずつ角度を変えて、書かせてもらっています。ラボラトリー方式の体験学習とりわけTグループとベーシックエンカウンターグループ(BEG)を比較することで、両者それぞれをよく理解できるのではないかと考えています。また、この作業を通して、体験することや体験から学ぶことを促進するために、どのような環境作りが必要なのか、またファシリテーターの働きかけが必要なのかを考えることができると考えている次第です。
ということで、今回は、小さな働きかけですが、結構、私には興味深い時間のアナウンスのお話です。
BEGで活動されてきた方とご一緒する機会があり、その時に、セッションの始まりを「今から何回目のセッションを始めます」という発言をするという話になりました。ラボラトリー方式の体験学習、とりわけTグループでは、今からセッションのスタートですといった発言はトレーナー(ファシリテーター)からはしないものです。初回のセッションの導入時にはトレーナー(ファシリテーター)から話し出すことがあっても、時間がきたらスタート、セッションの時間が終わるときには、Tグループの場合には、ふりかえり用紙が配られます。BEGでは、ふりかえり用紙を使わないことの方がおおいようで、これで、セッションを終わりますと告げるようです。
この最初と最後の時間の区切りのアナウンスは、BEGのファシリテーターにとっては、参加者の人たちに余計な配慮(時間のことを気にすることがなく)して、セッションに集中できるようにするというのが意図のようです。また、途中で時間のことを告げられることで、そろそろ時間だなとメンバーが心づもりができる配慮であるとのことです。一方、Tグループでは、時間の管理も参加者に意識してもらうことも大切にしたいと考えています。よって、時間の始まりも、途中の時間の経過も、終わりも発言しないようにしているといった方がよいかと思います。時間のことを発言することを通して、参加者の行為をコントロールしていると判断し、できる限り参加者に任せる、ゆだねることをよしとしているのではないでしょうか。
場合によっては、セッションの終わりが近づくにつれて、セッションの数が後残り少しですよということも、Tグループではためらわれる、いや積極的には、避けることがあります。一方の、BEGでは参加者に安心・安全の場づくりのために大切にされているのです。
このことは、体験することを大切にする、自己開示をしっかりして傾聴できることを大切にするBEGのグループ体験と、時間の管理も含めて、時間がなくて考えていることが達成できなくともそこから学ぶことを大切にするTグループのグループ体験との違いがあるのではないかと思います。
時間を知らせるというこの行為に関しても、観る角度の、視点によって、その行為の意味づけは異なってくるようです。
追加記事:時間切れの意味が、Tグループにはあると考えています。
→時間切れに意味があると考えています。このことも書き足しておきたいと思います。体験からの学びですから、Tグループを終えた後も、もう一度生きることができるのです。その時に、その時間切れの体験から学んだことを活かして、次を新しく生き直すのがTグループでは大切だと考えています。BEGでは、その時間内に最大限生きること、そうあることを大切にしようとしているのだろうと思います。やさしいBEG、冷たいTグループといえるのでしょうか(笑)。