Tグループとは No.055 グループプロセスのダイナミックス:グループプロセスを観る視点として2つのプロセス
グループやチームが効果的に活動を行うための要素として、R.Beckhard(1972)は、グループ活動に関するメタ研究を行い、“GRPI” Modelを提唱しています。
そのモデルでは、グループ活動にとって大事な要素として、①目標(Goals)であり、取り組むべき目標が明確化されメンバー間で共有化できているかが大切になると考えています。続いて、その目標に向かうための②役割(Role)があり、いかにそれぞれのメンバーが自分が担うべき働きを知り、責任をもって取り組めているかが課題です。③手順(Procedures)が明確であり、システマチックに進められるようにメンバー間で仕事を共に分けもっていることが大切であると考えています。
4つ目に、①目標(Goals)、②役割(Role)、③手順(Procedures)を進めていくための④相互作用(Interactions)で、グループメンバー相互の信頼関係であり、相互にサポーティブに自由に関わり合える関係性が大切になると考えています。
Reddy(1994)は、コンテントとプロセスという識別と共に、プロセスに2つのプロセスがあると説明しています。それらは、「課題のプロセス(Task Process)」と「関係のプロセス(Maintenace Process)」です。
「課題のプロセス(Task Process :タスクプロセス)」とは、いかにグループの課題を達成するかに焦点を当てたプロセスです。グループ活動の目標や話し合いの議題、役割、手順、時間の設定と調整のことであったり、情報や意見を提供し合う方法であったり、問題解決の進め方、意思決定の仕方、合意の確認などがどのように行われているかに着目するプロセスの視点です。
「関係のプロセス(Maintenance Process:メインテナンスプロセス)」とは、グループメンバーのニーズや満足のいく相互作用や関係性に焦点を当てるプロセスです。それは、メンバーシップ(内包、統制、情愛など)のありようなどの情動をともなう参加意識の変化、メンバー相互のまたは特定のメンバー(問題のあるメンバー、消極的なメンバーなど)の影響のありよう、規範やリスクテーキングのありようなどに着目する視点です。関係のプロセスは、課題達成における各メンバーの責任共有意識や関与度、満足度、充実度などの社会情動的な諸問題と強く関係しています。
このように見ると、Beckhardが示す①目標、②役割、③手順は、Reddyの述べる「課題のプロセス」に、④相互作用は、「関係のプロセス」に関連付けて考えることができると思われます。
それらを図示したのが、グループプロセスのダイナミックス図(現行最終バージョン)になります。これが、現在のつんつんのグループダイナミックス氷山図です。その図では、Reddyの「課題のプロセス」と「関係のプロセス」をそれぞれ易経における陰と陽の世界を重ねて表現しています。
グループが達成しようとしている目的や課題の成果、その成果に向かうための「課題のプロセス」を陽の世界として、またその活動を支える人間関係や個々のメンバーの感情や動機 など情動の問題を陰の世界として考えてみることを提案したいと思っています。
このように考えることによって、課題達成と人間関係のどちらかが大事といった議論ではなく、どちらも大事であるといった主張が受け入れられやすいと考えたからです。Tグループ(人間関係トレーニング)を体験すると、ともすれば「コンテントよりプロセスが大事である」と考えがちになりやすいのですが、コンテント(なすべき課題)あってのプロセスであり、どちらも重要なのです。
コンテントや課題達成に向かうためのプロセスは陽の世界(人は注目を引きともすればそれが大事と思いがちで陽が当たりやすい領域)ですが、課題を成し遂げるためにはそれを支える関係のプロセス 、陰の世界(目に見えにくい人と人とのかかわりの領域)がなければ成り立たないと考えることは大切でしょう。
また、陰の世界である関係的な過程(プロセス)だけの充実を図ろうとするのではなく、その活動の本来の目的であるコンテントの充実(陽の世界)も同じウェイトで大切にする必要があるのです。
Reddy (1994)は、陽の世界の「タスク(課題の)プロセス」と陰の世界の「メインテナンス(関係の)プロセス」への働きかける際の焦点づける割合は、活動の進行と共に変動するものであり、コンサルタントやファシリテーターはバランスを考慮しながら介入をしていく必要があると述べています。(つづく)