Tグループとは No.036 フィードバックを受ける与える:関係づくりと未知な自己と出会うために
フィードバックとは、元来、自動制御回路などの電子工学の分野で用いられている用語です。フィードバックとは、入力と出力のあるシステムにおいて、出力された結果を入力側に戻して出力を制御する働きを指しています。冷暖房装置において特定の温度設定をして、冷暖房の出力温度を測定し、その結果、温度情報を冷暖房装置に戻し、設定温度を維持するように機能しているのもフィードバック装置の働きといえるでしょう。
人間関係におけるフィードバックとは、各人の意図した行動が他者に意図した影響を及ぼしているかに関する情報を提供したり、受け取ったりする情報の相互交換のプロセスです。
E.W.Seashoreさん(1999)は、なぜフィードバックが必要であるかを示しています。
①私たちが、人間関係を構築したり、維持したり、試したりしたいならば、フィードバックは主たる情報源になります。先に示したように、自分が人間関係を構築しようしたり、新しい関わりを求めたりした意図した働きかけ(言動)が、他者にどのような影響を与えているかどうかを知ることはとても重要です。
②フィードバックなしに、私たちの知覚したことや反応、観察、意図のリアリティをチェックすることはできません。日常生活の中で、自分が歩いている道が、どのような道路状況なのかのフィードバック情報が無いならば、安心して歩くことさえ難しくなります。私たちにとって日常生活にとってフィードバック情報は無くてはならない働きをしています。
③誰かが始めたことややめたこと、修正した行動などに関する私たちの知覚や感情などを分かち合いたいならば、フィードバックすることなしには遂行できないでしょう。お互いの関係をつくり、より親密な信頼し合う関係を構築するためには、相互にフィードバック情報を含めた会話が必須になるということは間違いないでしょう。
④こうしたことを通して、E.W.Seashoreさんは、フィードバックを用いることは、私たちが何かについて誰かと相互作用をする際に重要になると考えています。
以上を見る限り、基本的に人間関係トレーニングにおけるフィードバックとは、メンバーの意図した言動が他のメンバーにどのような影響を与えているかを知るために必要と言えます。フィードバックは個人やグループが成長するためになされるものであり、またお互いの関係をより深めるために行われるものであることがもっとも大切であると考えています。すなわち、他者を非難したり、評価したり、操作したりするものではないということです。
このように考えると、メンバーがとった言動に対して、他のメンバーがどのようなインパクトを受けたかといった情報を提供することであって、もう一度強調しておきたいのですが、その人物を評価したり、操作したりすることではないことを明らかにしておきたいと思います。
フィードバックを受けとったり与えたりする際の留意点として、つんつんは下記のようなことを示しています。
①フィードバックは記述的であること→×フィードバックを与える人が受け手を評価しない(評価・判断は受け手が自分の言動の意図と関連させて行う)
②「私は・・・」のメッセージでフィードバックをすること→×「あなたは・・の人ですね」と言わない(フィードバックを提供する人が受け手の人を断定しない)
③フィードバックを受けとる人に必要性が感じられること→×フィードバックを与える人が自分の思いで動かそうとしない(操作的にならない)
④フィードバックを行動の変容が可能であること→×受け手の相貌や容貌などに関するフィードバックをしない(相手の変化・成長を願う)
⑤適切なタイミングであること→×ためない(言わずにその時を逃して、ずっと抱えていると増幅してしまうことになります。そのことを避けるためにも今その時が大切になります)
⑥フィードバックを与える人は伝わっているかどうかの確認をすること→×一方的でない(フィードバックを受けとられた人がどのようにそのフィードバックを受けとっているのか、受容できているかの確認は大切です)
⑦多くのメンバーからフィードバックをもらうこと→×特定の人の影響を受けない
留意点を考えると、1つのフィードバックの方法として、下記のようなフォーマットで、フィードバックを与える人が影響を受けたインパクト(感情、思考、行動)を伝えることを奨励しています。
◎あなたが をした時(行動)
<インパクト(結果)を伝える>
⇒私は を感じました(感情)
⇒私は を考えました(思考)
⇒私は をしました(行動)
(つづく)