Tグループとは No.020 先輩トレーナー(ファシリテーター)から学ぶ&と学ぶ
つんつんがラボラトリー体験学習のファシリテーターとして、多くの体験と学びを深めるきっかけをもらった方に、No.19で紹介した南短短期大学人間関係研究センターで始めたTグループの先輩トレーナーであるN先生とH先生、故Y先生の存在があります。
N先生からは、Tグループのトレーナー体験を駆け出しのつんつんをJICEなどのTグループに誘っていただき、コ・トレーナーとして共に体験をさせていただきました。この体験は貴重で、私のTグループ・トレーナーの幅を広げる大きな機会になりました。
何度かご一緒させて頂く中で、N先生はふっとグループの中に座られ、これまでの私のイメージした権威的な存在感はなく、参加者の方とともにいる感じであり、また参加者の鋭く問題点を指摘するというよりは、今起こっていることを説明するような介入もあったように記憶しています。牧師であると言うことも大きなN先生の立ち位置に関係していたのだろうと思います。メンバー一人ひとりに対するまなざしと愛する気持ちがあふれていたのだろうと思います。
時には、Tグループの中にあって、手も足も出ないようなつんつんのありようもトレーナーとして受け容れてくれて、Tグループセッション後もいろいろな質問に答えてくれて、Tグループのトレーナーとしての基本的なありようを初期の頃のN先生とのコンビネーションの中で学ばさせていただきました。
確か、あるプロセスを扱い損ねたつんつんに対して、「また同じこと(プロセス)は必ず起こるから、慌てることはない。次回に期せば良い。」とか、ムキになる私に「近づけば近づくほど遠ざかることがある。押してダメなら引いてみな的な介入。」とか、そうした介入のヒントをたくさん学ぶことができました。ラボラトリーの中での自然体の感覚、また明石の穴子を骨の髄までいただいたお茶漬けの味、たくさんのことをご一緒させていただきました。ある時には、参加者からつんつんの動作がまるでN先生の振るまいと似ているとまで言われたことがありました。そこまでご一緒できたことに感謝です。
H先生からは、社会人(組織人)を対象にしたラボラトリー教育をどのように実施するか、とりわけ実習を用いた体験学習を企業人に実施されている場面に同行させていただく機会がたくさんありました。今の医療・看護領域での教育、組織で働く人々へのラボラトリー体験学習の実施をつんつんができるようになったのは、H先生のおかげだと思っています。
ニンカン誕生時期と時を同じくして発刊された「CreativeOD」(プレスタイム社)のシリーズの編纂にも途中から故H.Y.先生と共に関わらせていただき、出版物の刊行と共に、本書を活用したラボラトリー体験学習の基礎講座、ファシリテーター養成講座をお誘い頂き、ご一緒できたことはラボラトリー方式の体験学習をさまざまな対象者に実施することができる、私には大きな財産になっています。
とりわけ、H先生の体験学習の実習を行い、ふりかえり(参加者のわかちあい)の時間をたっぷりととること、わかちあいの後の、「インタビュー」をして、参加者の生の声を大切に取り上げながら「コメントというかミニレクチャー」により体験から学んだことの概念化や意味づけのお話の妙味は何度立ち会わせていただいても尽きることがない学びの場でした。駆け出しの当時は、H先生の研修に同行し、H先生の話を聞きながら、メモ書きを一生懸命していたことを思い出します。自宅に帰ってから、メモの内容をタイプし直したときもありました。こうしてH先生のお話のコレクションをすると共に、ミニレクチャーの技を盗ませていただきました(まだまだ途上ですが・・・)。
その時に私自身が気づいたことですが、H先生のコメントを書き写すだけでなく、参加者のふりかえりの発言や感想の言葉をメモすることの意味の大切さを知りました。貴重な参加者の体験後のコメント(感想)からH先生もお話はスタートすることから、それらの感想をもとにどのようなコメントがつんつんならできるか?このことを考えることは、その後のつんつんのラボラトリー教育活動の役に立っていると思っています。そして、ラボラトリー体験学習のファリシテーターをめざす人たちには、これらのことはお勧めしたいと思います。
H先生とTグループをご一緒する機会は、少なかったのですが、H先生がトレーナーをやってくださる最後のTグループをご一緒できたことはとても記念に残る出来事になっています。一人ひとりを肯定する、そしてその意図や自分の思いを的確に説明し、参加者に伝える姿勢は、実習を用いたラボラトリー体験学習の時の姿勢と何ら変わることがないありようでした。
H先生の組織の中での体験学習の実践は、まさに当時の組織開発の中で取り組みであり、その組織における実践活動による知見は、つんつんにとってはとても貴重な視点をいただくことになっています。
故Y先生とは、長くニンカン時代のラボラトリー教育の革新的・実践的活動を共にすることができました。故Y先生の新しい発想やプログラムの展開のアイデア、またそれを具体的に取り組もうとする冒険心はとても素晴らしかったです。また、彼の純粋さから、企業活動へのラボラトリー体験学習の提供はかたくなに行わない人でもありました。
居宅が同じアパートメントでもあり、また子どもたちの年齢も近いことがあり、同じアパートメントに同居する大学の教員家族との交流は今でも子どもたち同士の繋がりとしてあるようです。コミュニティを創ること、人間関係を築くことなどを実際の自らの家族を通して、いろいろと考える機会を得ることができたのも大きな実践的学びになりました。
故Y先生とも晩年センターのTグループでご一緒することがありました。思い起こし印象的なことは、ほぼセッションが終わりの頃、あるメンバーの動作があることを避けるように見えたのでしょう。その動作を鋭く指摘し、その場から逃げる行為を巡ってのやりとりになったことです。彼は、私の留学よりも前にカルフォルニアの大学に留学をし、ゲシュタルト・セラピーを学んでこられました。きっとこうした学びもその後のTグループの中でのトレーナーのありようや自信にも繋がったのではないかなと想像しています。
その時のトレーナーへのフィードバックでは、故Y先生は居合抜きの達人(確か、武術の達人かな)と言われ、つんつんはマラソンの伴奏者と言われたのが、今でも印象に残っています。
特に、故Yさんと共に出版の仕事をしたことを思い出します。米国留学から帰ってきて「人間関係トレーニング〜私を育てる教育への人間学的アプローチ〜(ナカニシヤ出版)」を刊行することを共に計画し、執筆者を割り当て、原稿をもらってからの編集作業が思い出深いものになっています。すべての原稿を彼と交替に音読しながら、引っかかる箇所では立ち止まり、言葉を替えて読み直し、すべての章を少なくとも2度は読み通しました。ニンカン発の「人間関係トレーニング」の初版が1992年に刊行されてから2005年に第二版となり、今もなお多くの方に読んで頂いていることをありがたく思っています。
本当に、私の人生に貴重なトレーナー(ファシリテーター)と体験を共にしてくださった方に深く感謝します。ここに書き切れない方がまだまだいますが紙面の都合上割愛をおゆるしください。(つづく)